ヤン・ファン・ホイエン。ナイメーヘンの眺め
(1649年)
ヤン・ファン・ホイエンの作品によって、17世紀前半のオランダの風景画の原則が表明されました。オランダの風景画は、民族的で、特定の場所の風景を鮮やかに描き、描写の具体性を追求しています。このため画家たちは、実景を描いたデッサンをもとに工房で絵を描きました。ヤン・ファン・ホイエンの名とともに、民族的なテーマが最終的に受容されました。情熱的な旅行家であったホイエンは、オランダじゅうを旅し、旅行用のスケッチブックを片時も手放しませんでした。スケッチブックのなかに書きとめられたスケッチは、画家にとって、作品の足がかりとなるものでした。ヤン・ファン・ホイエンは、この絵のなかで、オランダのどこかの自然を、情感豊かに描いており、そこには国の姿、オランダの自然の姿が、もれなく描きだされています。その風景は日常的で、しかしその日常性のなかにこそ、画家にとっての、祖国の自然の特別な魅力が垣間見えるのです。横に長い形は、見る者をゆったりした観照にいざないます。ヤン・ファン・ホイエンは、奥行きを表現するために、絵の端のほうに画像のない広い部分を作るという、伝統的な手法を用いていません。構図上の対角線、雲、遠景が、遠近感をもたらしています。風景を満たす空気の感覚は、微妙な色のグラデーションによって表現されています。奥に遠のくにつれ、風景は明朗さと明瞭さを失ってゆきます。同じ光と空気のもとにあるという一体感は、色遣いによって表現されているのです。ヤン・ファン・ホイエンは、さまざまな色をたがいに近づけ、灰色から銀色に近い色調にまとめています。それは、どんよりと曇った日のぼんやりとした光による色合いです。空気は水蒸気が飽和しているようであり、塔、城壁、小舟、岸辺、大地の輪郭は、空気のなかや霧にかすむ遠景に溶けだしてゆくようです。動いてゆき、形を変えてゆく雲に閉ざされた空を、職人技で描いています。谷の多いオランダの風景をよく表している地平線が、低い場所に描かれているため、空が絵の大部分を占めるようになり、空がとても高く感じられます。ものの形が少しぼやけていること、空間と空気と光の相互作用によって捉えどころのなさが醸しだされていること、そして微妙な色遣いによって、自然は一体のものであり、あらゆる自然現象が相互に関連しているという感覚を生み出しています。
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