サンタ・マリア・デル・マル教会

教会、それとも…？
ビーチの方からサンタ・マリア・デル・マル教会に向かっていると、平らな石造りのファサードと八角形の塔は教会というよりまるで要塞のように見えます。でも、正面玄関にたどり着いて一歩中に入ると、そこはやはり教会です。それも、教会の中でも特に素晴らしい部類の。
サンタ・マリア・デル・マル教会は、元々港のすぐそばに建っていました。当時は海戦に赴く水兵たちが祈る海辺の教会として知られていたようです。しかし、今この教会の周りを見ても、近くに海はありません。ボートも、水たまりすら見つからないでしょう。なんと、長い年月の間に海岸線が後退し、現在の海岸は教会から遠い場所にあるのです。
この教会は14世紀に建てられたゴシック様式の建築で、カタルーニャによるサルディーニャの征服を象徴する建築物でした。建設が始まったのは1329年で、たったの60年後には完成しています。これは当時としては異例のスピードです。建設が速く進んだことによって設計図が当初から変更されなかったため、この教会の建物はカタルーニャ風ゴシック様式の代表作となっています。
1930年のスペイン内戦では、教会の一部が焼け落ちています。その後、建物全体の改修が行われましたが、燃えてしまった木製の装飾を再現する試みは行われませんでした。この判断が賢明だったという人もいます。装飾を再現すれば、現在のこの教会にある素朴で質素な美しさが損なわれてしまうからでしょう。現在の教会の姿は、その大きさと簡素さだけで深い感動を与えてくれます。
教会の主要な装飾は、ステンドグラスの美しい窓です。これらの窓が、完璧なバランスで自然光を教会内部に取り込んでいます。特に目を引くバラの形のステンドグラスは、14世紀に作られたものを元にしたレプリカです。
メインのドアの前に立つと、対象形が効果的に使われているのがわかります。この教会は随所が対象形になるように設計されており、このような教会建築は他ではあまり見ることのできない珍しいものです。天井を支えている柱の間隔にも注目してみましょう。教会の建設中、大工たちはいかに柱の数を減らすかに知恵を絞りました。構造上の強度の限界まで柱を減らし、かわりに広いスペースを確保したのです。あと少しでも柱の間隔が開いていたら、天井が落ちてきたとさえいわれています。本当に落ちてくる心配はないので、安心して広々とした空間を楽しんでください。
これだけでも、まだ全てではありません。教会に入ると、音がよく響くことに気付きます。この教会で年中催されるコンサートに行くと、音響の素晴らしさがさらによくわかるでしょう。