フランス・スナイデルス。白鳥のある静物画
(1640年代)
「白鳥のある静物画」はフランス・スナイデルスの筆になる作品です。スナイデルスは、ピーテル・パウル・ルーベンスをつねに支えた助手でした。このような装飾壁画が、スペインやフランドル地方の上流階級の大宴会場や宮殿の豪奢なインテリアを飾っていました。色取り豊かな彩色の華やかさと、装飾的な構図上の統一性が、国王クラスの発注主をも魅了しました。スペイン王フェリペ4世もその1人です。フランス・スナイデルスの作品は、空間的な広がりや、祝祭的で生きいきとした響きが、ルーベンスの絵画に近いといえます。「白鳥のある静物画」は、生の地上的な悦びを、真に礼賛した作品です。作品のなかでは、地上の富の豊かさは無尽蔵であるように思え、暮らしのなかにある祝祭はけっして途絶えることがないような印象を与えます。白鳥の美しい羽毛、力強い猪、虹色の色彩が溢れんばかりのまだら模様の鳥たち、籠に入りきらないほどの果物、絵柄のついた皿に盛られているロブスター、つややかに輝いている牡蠣、すべてが悦びの感覚とともに鮮やかに描かれています。絵からは、描かれた自然物が死んでいるという感覚を受けません。殺された獲物は、まだ体温を保っているかのようです。猪は凶暴な口を開けて歯を剥きだしており、白鳥が首を曲げているさまは威厳を感じさせます。足の速いダマジカは、走っている途中で一瞬たたずんでいるかのようです。このためこの静物画のなかでは、人間も動物も自然と見栄えがするものになっています。犬が獲物に鼻をつけて嗅いでおり、インコが果物をつついています。召使はイチジクの実を乗せた皿を運んでいます。イチジクは実りや豊かさの象徴です。画家は、絵画の迫真性と伝統的な比喩の手法を両立させています。鳥は空気の象徴であり、果実は土、海で採れた貝は水を表わしています。四大元素の表徴として、これらは、永遠の自然の法則、終ることのない自然の運動と更新を暗示しているのです。静物画に表された、大地の豊さに対する深い畏敬の念は、生まれ育った土地に対するフランドル派の愛郷心を表わしています。
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